2008年3月21日金曜日

青空文庫を検索しよう【いとう】

 青空文庫とは、日本語の作品で著作権フリーになったものを集めたサイトです。これを用例データベースとして使い、ボキャビルをしてみましょう。

【今回の強化表現:いとう】

 「いやに思う、いやに思って避ける」「いたわる、大事にする」という意味です。では用例を見てみましょう。

肉体や容色の美を財産とする俳優や女優たちが、世の常のいかなる人にもまして、老いを悪夢のように恐れ厭(いと)うのは当然であるが、そんなことに関係のない文学者や詩人たちも、老いを恐れ厭うことの心理においては、決して彼らの俳優たちと変りがない。
(老年と人生 萩原朔太郎)

先に立ちたるは、かち色の髪(かみ)のそそけたるを厭(いと)はず、幅広き襟飾(えりかざり)斜(ななめ)に結びたるさま、誰(た)が目にも、ところの美術諸生(しょせい)と見ゆるなるべし。
(うたかたの記 森鴎外)

馬は心に陶が金を貪るのを厭(いと)うて絶交しようと思ったが、しかしまたひそかに佳い木をかくしているのが恨めしくもあって、とうとう逢って誚(せ)めてやろうと思って扉を叩いた。
(黄英 田中貢太郎)

なんしろ火事というものは、無縁のヤジウマが汽車にのって殺到するほど魅力にとんだものだから、血気の消防員が遠路をいとわず馳けつけるのもうなずけるが、温泉地の火事は後のフルマイ酒モテナシがよろしいから、近隣の消防は二ツ返事で救援に赴くということである。
(安吾巷談 熱海復興 坂口安吾)

今日一般的に、相手が貧乏のときは恋愛の時は別として結婚しない、という意見が強いのです。これはつまり、金持なら愛なき結婚もいとわぬと云うことになるのですが、如何考えますか。
(女性の生活態度 宮本百合子)

「ああありがたや、山猫さま。私(わたくし)のようないくじないものでも助かりますなら手の二本やそこらはいといませぬ。なまねこ、なまねこ。」
(蜘蛛となめくじと狸 宮沢賢治)

「おふざけ召さるる場合でない。手前の落度になりますから、これだけ申し上げておく――お着の日、御饗餐(ごきょうさん)は、魚類をいといます。精進料理ですぞ。」
(元禄十三年 林不忘)

世をいといながら三時の勤行(ごんぎょう)を怠らない和尚を助けて、お島は檀家(だんか)のものの受けもよく、台所から襷(たすき)をはずして来てはその囲炉裏で茶をもてなしてくれたことを半蔵らも覚えている。
(夜明け前 島崎藤村)

宰相伊豆守も、高貴のおん身のおいといもなく、しんしんと降りまさり、しんしんとふけまさる雪の夜を冒して、お静かにそこに端座されたままでした。
(右門捕物帖 千柿の鍔 佐々木味津三)


 最初にあげた以外に「出家する」という意味もありますが、用例は見つかりませんでした。漢字では「厭う」と書きます。