【今回の強化表現:げっそり】
「急にやせるさま、急に減少するさま」「急に気力がなくなるさま、意気消沈するさま」を表す言葉です。では用例を見てみましょう。
この時スワンソン氏の財政状態も即刻スワンソン氏の命令を聞く現金はげっそりと減ってしまっていた。
(バットクラス 岡本かの子)
痩(や)せてげっそりと落ちた頬辺(ほっぺた)のあたりを指で軽く擦(さす)りながらシゲシゲと彼を眺(なが)めていたが、急に大きな声を出して笑い出した。
(六月 相馬泰三)
振返って七瀬を見ると、七瀬は眼を赤くして、げっそりとやつれていた。眼の色も、干(かわ)いて、悪くなっていた。
(南国太平記 直木三十五)
君の言うとおり、毛利先生を失ったわが法医学教室は闇だ。のみならず、毛利先生を失ったT大学は、げっそり寂しくなった。
(闘争 小酒井不木)
マツ子から五枚の原稿用紙を受けとり、一枚に平均、三十箇くらいずつの誤字や仮名ちがいを、腹を立てずに、ていねいに直して行きながら、私は、たった五枚か、とげっそりしていた。
(めくら草紙 太宰治)
この阿呆をはじめとして、私の周囲には佃煮にするくらい阿呆が多かった。就中、法科志望の点取虫の多いのには、げっそりさせられた。
(髪 織田作之助)
彼がこう囁いただけで、内側のない紙屑とボール紙とで貼り合せられたこの地球儀のような地球が、げっそりとひしゃげてしまいそうに思えた。
(あめんちあ 富ノ沢麟太郎)
げっそり懐手(ふところで)をしてちょいとも出さない、すらりと下った左の、その袖は、何も支えぬ、婦(おんな)は片手が無いのであった。
(露肆 泉鏡花)
ところが、その男が、その三十人力の力が出て働けるのは、大岳山の頭が見えるところだけに限ったもので、大岳山の頭が見えなくなるところへ行くと、げっそりと力が減っちまうんだっていうことを聞きました。
(大菩薩峠 めいろの巻 中里介山)
「九ツが鳴ったようだね。あれを聞いたら急にげっそりとおなかがへったようだから、おまんまを食べさせてくんな」
(右門捕物帖 妻恋坂の怪 佐々木味津三)
「げっそり」は擬態語です。あまりよくないことに使われますが、「げっそりとおなかがへった」などはおもしろい表現だなあと思いました。