2009年3月6日金曜日

青空文庫を検索しよう【いまいましい】

 青空文庫とは、日本語の作品で著作権フリーになったものを集めたサイトです。これを用例データベースとして使い、ボキャビルをしてみましょう。

【今回の強化表現:いまいましい】

 「腹立たしい、しゃくにさわる」「はばかり遠慮するべきである」「不吉である、縁起が悪い」という意味です。では用例を見てみましょう。

旅籠につめたのなどはまことにただの一部分で、いやはや、何とも残念だ、実にどうもひどい損をしてきた、心残り千万な、といまいましがつてゐる。
(土の中からの話 坂口安吾)

次に警部の一行は、室内捜査を開始いたしましたが、尾形警部は、ここで再び、いまいましそうに舌打ちをいたしました。というのは兄の死後、多数の人達がワッと押しかけて来たため、参考になるようなことが全く判らないのです。
(赤耀館事件の真相 海野十三)

田畑のできばえのことから近隣村内のできごとや、親類のいざこざまで、おもしろかったこと、つまらなかったこと、いまいましくて残念であったことなどのいっさいを予に話して聞かせる。
(紅黄録 伊藤左千夫)

固(もと)より父に向ひてはかへすこと葉知らぬ母に、わがこころ明(あか)して何にかせむ。されど貴族の子に生れたりとて、われも人なり。いまいましき門閥、血統、迷信の土くれと看破(みやぶ)りては、我胸の中に投入るべきところなし。
(文づかひ 森鴎外)

こんな味気ない夜には、お酒でもあると助かるのですが、この辺の地酒は、へんにすっぱくて胸にもたれ、その上、たいへん高価なので、いまいましく、十日にいちど五合くらい買って我慢しています。
(新釈諸国噺 太宰治)

「首途(かどで)に、くそ忌々(いまいま)しい事があるんだ。どうだかなあ。さらけ留(や)めて、一番新地で飲んだろうかと思うんだ。」
(鷭狩 泉鏡花)

山又山の奥ふかく分入(わけい)ると、斯(こ)ういう不思議が毎々あるので、忌々しいから何(ど)うかして其の正体を見とどけて、一番退治して遣ろうと、仲間の者とも平生(つねづね)申合せているけれども、今に其の怪物の姿を見現わした者がないのは残念です。
(木曽の怪物――「日本妖怪実譚」より 岡本綺堂)


 漢字では「忌々しい」と書きます。もともと忌み慎むべき状態を表していたのが、残念で心残りな状態を表すようになり、「しゃくにさわる」という意味へと変化していったようです。