【今回の強化表現:しんねり】
「ねばるさま、ねちねちと根気強いさま」「ぐずぐずしているさま」「しなやかなさま、しんなり」という意味です。では用例を見てみましょう。
たとえば、ひばりも、あまり美しい鳥ではありませんが、よだかよりは、ずっと上だと思っていましたので、夕方など、よだかにあうと、さもさもいやそうに、しんねりと目をつぶりながら、首をそっ方(ぽ)へ向けるのでした。
(よだかの星 宮沢賢治)
土地の人の気風は銀子にもよく判らなかったが、表面(うわべ)の愛らしい言葉つきの感じなどと違って、性質は鈍重であり、しんねりした押しの強さが、東京育ちの銀子にずうずうしくさえ思えるのだった。
(縮図 徳田秋声)
「きっと今にどうかなっちゃうから、見ていらっしゃい」
藤堂は暫く黙っていたが、しんねり、
「こいつもヒステリーです」
と云った。
(一本の花 宮本百合子)
新聞記者の第一条件は、文章が早く書けるということ、しんねりむっつり文章に凝るような者やスロモーは駄目だというわけだった。
(青春の逆説 織田作之助)
みんなが浮かれているときゃ、義理にも陽気な顔をすりゃいいんだ。しんねりむっつりとまた苦虫づらをやりだして、なんのことですかよ。
(右門捕物帖 お蘭しごきの秘密 佐々木味津三)
しんねり強い神経質な前までの経験の悪い悲しい経験でも善い経験に思いなして居る人、
(千世子 宮本百合子)
病者に等き青二才と侮(あなど)りし貫一の、陰忍(しんねり)強く立向ひて屈する気色(けしき)あらざるより、
(金色夜叉 尾崎紅葉)
辞書には漢字は載っておらず、最後の用例の「陰忍」は当て字のようですが、意味をよく表していますね。ちなみに「しんねり強い」は「ねばり強い」、「しんねりむっつり」は「はきはきしないで、無口で陰気なさま」という意味です。