【今回の強化表現:あいまって】
「たがいに作用しあって、いくつかの要素が重なりあって、一緒になって」という意味です。では用例を見てみましょう。
たとえば帽子の型のある奇抜な面白味というようなものは、それを頂いている顔に漲っている知的な趣、体のこなし全体に溢れる女としての複雑な生活的な勁さ、ニュアンスなどとあいまって美しさとなるのだから、
(新しい美をつくる心 宮本百合子)
伝法に言いすてると、米屋のお糸を促して、景気よく飛び出したものでしたから、ここにいたってむっつり右門の別あつらえな明知と才腕は、配下伝六の骨身をおしまざる活躍とあいまって、いよいよその第六番てがらの端緒につくこととなり、今は伝六が深川からの報告を待つばかりとあいなりました。
(右門捕物帖 なぞの八卦見 佐々木味津三)
しかし人口の増殖とともに獲物が割合に乏しくなり、その事が農業の発達に反映したということも可能である。それが仏教の渡来ということもあいまってわが国におけるこれらのゲームの絶滅をかろうじて阻止することができたのかもしれない。
(日本人の自然観 寺田寅彦)
此他種々の怨が、甚助の弁と相まって、勝豊に父を裏切らせるもととなったのである。
(賤ヶ岳合戦 菊池寛)
しかし富者も貧者も消費者も生産者も、互いに相まっておのおのその責任を全うするに至らなければ、完全に理想的なる経済状態を実現するを得ざること言うまでもなきことである。
(貧乏物語 河上肇)
作者の方では、なるべく手頃な材料をなるべく巧に描かんとする。評者の方では、描写の巧拙を以て作品の価値を律せんとする。両者相俟って、玉砕を捨て瓦全を取らんとするに至る。
(小説の内容論 豊島与志雄)
そういう自分たちのいる世界とは全く別の世界があるという発見は、もう一つの物語の世界の発見と相俟って、他のいかなる大きな現実の出来事よりも、私の小さな人生の上にその影響を徐々に目立たせて行った。
(幼年時代 堀辰雄)
父に対する甘えが未だ自分に残っており、(ということは、自分が未だ本当に成人(おとな)でなく)それが、「父が自分をまだ子供と視ていること」と相俟(あいま)って、こうした結果を齎(もたら)すのだろうか?
(光と風と夢 中島敦)
漢字では「相俟って」と書きます。この「俟」には「あてにする、期待する」という意味があります。