2010年2月5日金曜日

青空文庫を検索しよう【しっぽり】

 青空文庫とは、日本語の作品で著作権フリーになったものを集めたサイトです。これを用例データベースとして使い、ボキャビルをしてみましょう。

【今回の強化表現:しっぽり】

 「雨が静かに降るさま、しっとりと濡れるさま」「男女の仲のこまやかなさま」「しめやかなさま、静かに落ち着いたさま」を表す言葉です。では用例を見てみましょう。

道傍(みちばた)には盗んでゆかれそうな街灯がポツンと立っていて、しっぽり濡れたアスファルトの舗道に、黄色い灯影(ほかげ)を落としていた。
(人造人間事件 海野十三)

尤(もっと)もこの変りやすい空模様思いがけない雨なるものは昔の小説に出て来る才子佳人が割(わり)なき契(ちぎり)を結ぶよすがとなり、また今の世にも芝居のハネから急に降出す雨を幸いそのまま人目をつつむ幌(ほろ)の中(うち)、しっぽり何処(どこ)ぞで濡れの場を演ずるものまたなきにしもあるまい。
(日和下駄 一名 東京散策記 永井荷風)

ご番所をさがって帰っての夕ぐれのしっぽりどき……伝六、でんでん、名人、むっつり、ふたりの、これは初午であろうと二十五日であろうと、年じゅう行事であるから……
(右門捕物帖 血の降るへや 佐々木味津三)

「十五郎はもっと痛い目に会うているわッ、たわけものめがッ。いのちがあるだけ倖(しあわ)せじゃ。早う飛んで帰って腰本治右にしかじかかくかくとあることないこと搗(つ)きまぜて申し伝えい。アッハハ。……ずんと涼しゅうなった。梅甫夫婦また来てやるぞ。売られた喧嘩でも喧嘩のあとはまた、しっぽりとしていいもんじゃ。たんと楽しめ」
(旗本退屈男 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男 佐々木味津三)

やはり黙って、そして、できるだけ考えずにいたほうがいい。かの女は、この会体の知れない恐怖感に、しっぽり全身を漬けて、それをじぶんだけのものとして酔い痴れていたい気もちもあった。
(あの顔 林不忘)

枝繁(えだしげ)き山桜の葉も花も、深い空から落ちたままなる雨の塊(かた)まりを、しっぽりと宿していたが、この時わたる風に足をすくわれて、いたたまれずに、仮(か)りの住居(すまい)を、さらさらと転(ころ)げ落ちる。
(草枕 夏目漱石)

これだけいえば、君は主人を殺し得る只一人の人物だった。家政婦の小林と芝山は、その頃は小林の部屋でしっぽりよろしくやっていたので、主人を手にかけるどころじゃなかった。
(地獄の使者 海野十三)


 用例はあまり多くありませんでしたが、雰囲気のある言葉ですね。